大学進学を考えている若いみなさんは、一般入試が大学に入る王道だと考えているのではないでしょうか。
でも特別に地頭がよいとか勉強が三度の飯より好きという人でなければ、なるべく一般入試をしないで大学に行くことをおすすめします。
その理由は、一般入試は狭き門であり普通の人が第一志望に合格するのは想像以上に大変だからです。
長女も長男も附属高校から推薦で大学へ進学しました。普通に努力して希望の学部を選ぶことができました。もし一般入試を受けていたら、今の進学先は難しかったのではないかと思っています。
二人とも公立中学から私立の附属高校に進学しました。中学の友達の多くは、中堅以上の都立高校に進学しました。みんな優秀な成績できっとMARCH以上の大学に進学するのだろうと思っていました。
しかしふたを開けてみると一般入試の結果は全く思わしくありませんでした。滑り止めの大学にしか受からなかったり、受験したすべての大学に落ちてしまい浪人してしまった人もいます。
長男の付属高校のクラスメイトで学年で5本の指に入る秀才が、系列大学より上を目指して外部受験(一般入試)をしたのですが、結局系列大学しか合格しなかったということも衝撃的でした。
彼らは決して努力が足りなかったわけではありません。1年生から塾に通い、夏休みは夏期講習や模擬試験を受け、熱心に勉強し最大限に努力した結果がそうなのです。
大学の一般入試を高校入試と同じように考えていると痛い目にあいます。
大学の一般入試は、高校入試とはまったく別物なのです。
一般入試を避けるべき理由についてくわしく説明します。
私立大学の定員厳格化の影響
今や大学生のうち一般入試で入学した人の割合は全体の半分以下45%となっています。半数以上が、付属校からの推薦や指定校推薦、公募推薦、AO入試などを使って大学に入学しているのです。もはや一般入試はメジャーではありません。
これには私立大学の定員厳格化が大きく影響しています。
文科省が私立大学に対して「大学の定員をきちんと守らないと補助金を減らす」と圧をかけたのです。
私立大学はこれに敏感に反応しました。何としても定員を厳守しなくてはいけない。そのためには、受験生のうち何人が入学するのか、きちんとした数字を把握する必要があります。一般入試では、何校もかけもち受験ができるため人数把握に難しさがあります。
そこで大学側は、合格通知を出したら確実に入学してくれる推薦の枠を広げたのです。その結果、一般入試の枠は狭くなり、推薦で埋まらなかった分の調整に使われるようになってしまいました。
中学受験組との互角に戦える?
中学受験、高校受験、大学受験の中で、偏差値が一番高くなるのが高校受験だと言われています。それは、ほとんどの中3生が高校を受験するため、偏差値の母数の数が最も多く、成績が底辺の受験生もその母数に入っているからです。そして、その母数には中学受験組が入っていません。中学受験組には大学附属に行ってそのまま大学に進学する人もいますが、大学受験を見据えて進学校に通っている人もい ます。
言うまでもないことですが、私立の進学校にとって一番大事な使命は、有名大学の進学率を上げることです。保護者はそれが目的で入学させ高い学費を支払っているのです。有名大学の進学率が下がれば、新規入学希望者の数も下げてしまう可能性があります。私立の進学校にとって有名大学の進学率の低下は死活問題なのです。
進学率を上げるために進学校の教師は、あらゆる手段を使って生徒を有名大学に合格させようとします。高2のうちに高3までの教育課程を終わらせ、高3の1年間はひたすら大学入試の演習問題を解かせるという公立の生徒からすると「反則技じゃん」と思えることもやってのけます。
私立進学校にとって、中学・高校の6年間は、大学受験を制するための準備期間なのです。そこで鍛えられた受験生は強いです。中学受験組と互角に戦うには、相当高い学力をつける必要があります。
一方、成績が底辺の生徒はほとんどが大学に進学しません。よって大学の一般入試の母数は、高校受験した中堅以上の公立・私立高校の生徒、中学受験組、浪人生で構成されます。高校受験と比較して母数のレベルが格段に上がっていることが分かります。
高い倍率 一般入試は全国戦
高校受験では、自宅から通える範囲の高校しか受験しません。そのため、どんなに人気がある高校でも倍率はある程度抑えられていました。しかし大学受験は違います。地方には大学が少ないため、上京してくる人も少なくありません。大学で学びたいという志を持った生徒が全国から集まってくるのです。当然、倍率は高くなります。
高校入試では1~3倍。高くても4倍程度の倍率ですが、大学入試では5倍前後が普通です。 人気の大学や人気学部になれば、普通に10倍にも跳ね上がります。
一般入試は運の要素もある
よく一般入試は水ものだと言われます。運よく勉強したところが出て合格したり、逆に苦手分野が出て不合格なんてことはよくある話です。合格のボーダーライン上には、同じくらいの学力の受験生がひしめき合っています。1点、2点の差で合否が決まるのです。
箸にも棒にもひっかからない人がたまたま運よく合格することはありませんが、滑り止めだと思っていたのに落ちたというケースは非常に多いのです。
共通テストも年によって傾向がガラリと変わることがあります。数年前には、数学で非常に難度が高い問題が多く出され、試験終了後に泣き出す受験生がいたということがニュースになっていました。
一般入試は落とすための試験です。急に傾向が変ったり、トリッキーな問題が出されたとしても、定員まで人数を減らすことができれば、ある意味目的は達成されたと言えます。
気の毒なのは、一生懸命勉強したのに結果を出せなかった受験生です。不合格になった受験生にかける言葉は「運が悪かったね」ぐらいしかありません。世の不条理をを身をもって知ることになるのです。
一般入試は行きたい学部を選びにくい
一般入試の方が行きたい学部を選べるんじゃない?という声もあるかと思います。確かに一般入試では、行きたい学部だけに絞って受験することができます。一方、大学附属の推薦は成績順で決められるので、成績が悪ければ行きたい学部にはいけません。
大学附属の場合、はじめから進むべき大学は決まっています。なので早いうちから、どの学部に進んでどんな勉強をしたいか、将来どういう職業につきたいかということを考えます。行きたい学部が決まれば、そこに向けてある程度勉強すれば、高い確率で希望の学部に進むことができます。
一般入試の場合、学部や将来について考えるより、とりあえず勉強するところから入ります。勉強をするうちに大学合格がゴールになってしまい、より偏差値の高い有名な大学に行きたいという気持ちの方が強くなってしまいます。
そして行きたい大学が決まったら、複数の学部を受験します。たとえばA大学の法学部が第一志望だったとして、法学部は落ちたけれど商学部には合格した場合、少しランクの低いB大学の法学部に受かったとしてもA大学の商学部を選んでしまうケースが多いのです。
実際に入学して授業が始まると、もともとそんなに興味があるわけではないので、勉強に身が入らないなんてこともよく聞かれます。
AO推薦入試の場合は、はじめにその人の強みがあって、その延長線上にある学部を受験するので、行きたい学部、得意とする学部しか受験しません。受かりやすいかどうかはともかく、行きたい学部に確実に行けるのがAO推薦入試だと言えるでしょう。
一般受験は入学後に解放感から遊んでしまう
一般入試は、推薦入試に比べ、勉強する期間が圧倒的に長いです。高校入学と同時に大学受験に向けて勉強する人も多いでしょう。
3年生になると受験モードに突入します。夏休み、推薦組が合格し遊んでいるのを横目で見ながら、塾に通いひたすら勉強に励みます。秋、冬と追い込みをかけて勉強時間はさらに長くなります。そしてやっと解放されるのが、2月3月です。浪人してしまうとさらにそこから1年勉強する期間が延びてしまいます。
一般入試で合格して大学に入ったら、当然遊びます。遊ぶなという方が無理です。あんなに長い間勉強をし、合格を勝ち得たのだから、思いっきり遊んでほしいと思います。
一方、推薦組は合格が決まった時から、ある程度遊んでいるので、大学入学時には学ぶモードに切り替えている人が多いです。
一般入試組もある程度遊んだら、学ぶモードに切り替えられればよいのですが、中にはそのままズルズルと自堕落な生活を送ってしまう人もいます。これは個人差が大きいです。
おわりに
大学の一般入試を避けた方がよい理由について書きました。
推薦入試がすべておすすめと言っているわけではありません。中には一般入試に向いている人もいます。地頭がよくペーパーテストに強い人は一般入試を受けたらいいと思います。
ただ、多くの受験生にとって、今の一般入試は、かけた努力の大きさや払った犠牲に対して得られるものが少なく、割に合わないケースが多いのです。浪人のリスクもあり、気持ちが不安定になりやすいのも事実です。
大学に行くには色々な方法があります。ペーパーテストが苦手な人は、一般入試で大学を目指す必要はありません。自分にあったやり方はどれか、早い段階から探してみることが大切です。
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