この記事では、みんなが読みたくなるようなおもしろい卒業文集の書き方を紹介します。
小学校の卒業文集にざっと目を通して感じるのは、最後まで読ませる熱のこもった作文が少ないということです。
普段は個性的でおもしろい作文を書く子でも、卒業文集になると、ぼんやりしたありきたりな文章を書いてしまいます。
なぜ卒業文集に読みたいと思わせる作文が少ないのか。
その理由について考えてみます。
卒業文集のテーマ選びにバイアスがかかっている
卒業文集で選びがちなテーマは「6年間の思い出」「修学旅行の思い出」「将来の夢」です。
卒業文集に書くべきテーマは、小学校の思い出や将来の夢に限定されていると思い込んでいないでしょうか。もちろんこれらのテーマでも「書きたい」という強い思いがあればよいのですが、何となく書いてしまうと失敗します。
普段の作文では身の回りに起きた出来事やおすすめのYou-Tubeなど、自分に興味あるテーマで書いていたのに卒業文集になると、多くの子どもが「小学校生活の集大成なのだから、何か壮大なことを書かなくては」と心的制約をかけてしまいます。
別に書きたければ、自分の好きなYou-Tubeについて書いてもいいのです。
20年後の自分が読み返したとき「ああ、当時はこんなことを面白がっていたのか」となつかしく思うはずです。
「卒業文集」というバイアスを一回外して、興味があることやその時にはまっていることを書いた方がおもしろい作文が書けるかもしれません。
字数を稼ごうとする
卒業文集は400字詰に原稿用紙で3枚から4枚は書かなくてはなりません。中にはこんなに長い文章を書くのが初めてという人もいるでしょう。そこでやってしまうのが字数稼ぎです。
たとえば「と思います」という文末を「と思う今日この頃です」にしたり、必要ないのに長い接続詞「しかしながら」「それどころか」等を挿入したり、すぐ改行して余白を多くしたり、色々な知恵を絞ります。
これでは表現がまわりくどくなったり読み手に不自然な印象を与えてしまいます。
また、「修学旅行の思い出」について書いていたのに、原稿用紙が余ったのか途中から「将来の夢について」について書きはじめるという荒業をやってのける子もいます。
時系列作文が多い
時系列作文とは起ったことを古い順から並べて書いている作文のことです。
たとえば「1年生はこんなことがありました。3年生になって〇〇をしました。6年生では〇〇ができるようになりました」といった作文です。
修学旅行の作文でも1日目は〇〇をしましたから始まり最後の日までどこに行って何をしたということを克明に書いています。そして最後に「いい思い出になりました」「とても楽しかったです」など、感想の一文でまとめようとしています。
読む人の気持ちになってみてください。そんな旅行の行程表のような作文を読んでみたいと思いますか。
なぜ卒業文集がおもしろくないのか
おもしろくない卒業文集を書いてしまう最大の原因は、
書いている本人が卒業文集を書くということを楽しいと思っていないからです。
先生に書かされている、文集の割り当てスペースを埋めなくてはいけない、こんな気持ちで書いていてはおもしろい作文は書けません。
ではどうしたら魅力的な卒業文集の作文をかけるのでしょうか。
書きたいことをフォーカスしよう
たとえば、あなたがカメラマンで手にカメラを持って公園にいるとします。
あなたはそのカメラで何を撮りたいですか。
緑の木々を撮る人もいれば噴水で水遊びしている子どもにシャッターを切る人もいるでしょう。
遠くから公園全体の写真を撮って「はい、おわり」そんなカメラマンはいないはずです。
カメラマンは漠然とした景色の中から何か一つ撮りたいものを選び出します。
撮りたいものとはカメラマンが伝えたいことです。
草花の美しさや子どもの無邪気さ、カメラマンが100人いれば100個の伝えたいこと100通りの伝える方法があります。
作文を書くということは、カメラをもってフォーカスすることと同じです。
まず何にフォーカスするのかを考えましょう。フォーカスするのは一つです。
あなたが読者に一番何を伝えたいのか、自分自身に問いかけてみるのです。修学旅行にについて書くなら、修学旅行全体ではなく、訪れた寺院を建てた歴史上の人物への思い、旅先で出会った人の親切、その土地の料理の素晴らしさ、何か一つに絞ってください。それは何でもよいのです。
読者はあなたが何にフォーカスして、どのように伝えてくれるのかを見たいのです。そしてそこから、あなたがどうゆう人なのかを知りたいのです。
文章を短く切ろう
字数を稼ごうとして一文を長くしてしまうと読みにくくなります。
主語と述語が遠く離れていると書いている本人も何が何だか分からなくなってしまいます。
短い文を重ねた方がテンポがよく読みやすいです。必要のない言葉は取りましょう。
要らない言葉をそぎ落とした文章は、すっきりと美しく読んでいて心地よいリズムがあります。
時系列に書くことはNG 書き出しに工夫しよう
「いつ、どこで、だれと何をしたか順番に書きなさい」
小学校低学年のときに先生からそう教わったかもしれません。
低学年の作文はそれでよかったかもしれませんが、書きたいことをフォーカスした作文は、時系列に書いてはいけません。「いつ、どこで、だれと」も書く必要がなければ書かなくてよいのです。
作文は書きだしが大事です。
書き出しで読者がその作文を読んでくれるかどうかが決まるからです。
次の二つの書き出しを読み比べてください。
【例1】
朝起きると晴れていた。今日は修学旅行だ。ぼくは、忘れ物がないように何度も確認して家を出た。学校に着くとバスがもう来ていた。バスに乗り込むとき、ぼくは財布を忘れていることに気がついた。
【例2】
今日はなんだか嫌な予感がする。修学旅行の朝なのに不吉だな、そう思って学校まで走っていった。学校に着くとバスがもう来ていた。バスに乗り込むとき、ズボンに手を入れてハッとした。「しまった、財布を忘れた」
どうですか。【例2】の方がその続きが知りたくなって読んでみたいと思うでしょう。書き出しを工夫してみると書くことが楽しくなります。色々試してみてください。
なるべく形容詞を使わないで書こう
「チューリップがさいていました。きれいでした。」低学年の作文です。
高学年の作文では、ぜひ「きれい」「うれしい」「楽しい」などの形容詞を使わずに美しさ楽しさや嬉しさを表現してほしいのです。
例文で説明します。
【例1】
川の水がとてもきれいでした。
【例2】
川の水が日の光に当たって輝いていました。
情景が浮かぶのは【例2】の方です。【例1】は「とても」という言葉で形容詞の意味を強めていますが、どうきれいなのか読む人に伝わりません。
形容詞を使わない作文は難しいです。楽しさや嬉しさを読む人にも分かるように表現するのは実は大人でも難しいのです。
でも挑戦してみる価値はあります。読む人に気持ちを伝えたいと一生懸命考えた作文は、熱を帯びています。熱量が感じられる作文は読む人の心をひきつけるのです。
あとがき
子どもの小学校の文集を読んでみて魅力ある作文が少ないと思ったので、記事にまとめました。
バイアスを外したりちょっとした書き方のコツを知るだけで、子どもの文章は生き生きと輝きます。
文章を書くということは自分と向きあい、自分を知るという崇高な作業です。難しいけれどやりがいがあります。
今の小学生が大人になるころには、今以上に個人がどういう人で何を考えているのかが問われる社会になっているでしょう。
学校の勉強の中で作文は点数に表われにくいので、なおざりにされる傾向があります。でも数少ないアウトプットの勉強です。
書くことを楽しむことができれば、違う未来が見えてくるかもしれません。
【おわり】
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